ニキーチンさんに学ぶ③ 「模様つくり」

さて、今回は「模様つくり」をご紹介することにしましょう。
「ニキーチンの知育遊び(暮しの手帖社)」を開くとすぐに、たくさんの幾何学模様が目に入ります。赤・青・黄・白で構成されたこの模様には、いくつかのものに名前がついています。
ニキーチンさんが子どもたちと命名されたのかしら?きっと他にも候補の名前があっただろうな、上下反対にしたら違うものに見えるかなあ…
いろいろな想像をしながらこれらのページを眺めてみるだけでも、ニキーチンさんと子どもたちの間で生まれたわくわく感がこちらにも伝わってくるように感じます。でも…私たちはまずは積木そのものに出会うことから始めましょう。ニキーチンさんだって、まずはそこから始められたのです。この出来上がった幾何学模様は、遊びこんだからこその結果なのですから。


「ニキーチンの積木は何歳ぐらいから与えれば良いですか?」
これもよく受ける質問のひとつです。
模様つくりを1個だけ、2・3歳の子どもに手渡してみてください。積木をしきりに触りますが、6面にそれぞれ違う彩色がなされていることに気づくためには手指を使って小さな立方体をくるくると回さなければなりません。何人かですると「あっちのほうがいい」とお友達の持っているものをほしがったりもします。でも、実はこの積木は16個全て同じように彩色されています。私はワークショップなどでは、1つの積木をさいころのように転がして偶然を楽しみながら色んな面があることを確認し合う事があります。親子で遊ぶと時々偶然同じ色になってキャッキャと喜んでいます。お母さんと同じ色にしたい!となれば、自然と手指を使って積木を操り始めます。そうなれば、準備OKです。
はじめは2つ、そして3つ4つ…と増やしていくと工夫は変化してきます。思い出してみて下さい、積木の基本は「並べる」と「積む」ですよね。子どもたちはこの積木でも見事にそれを始めます。「この積木はそんなことをするものではないの!」とどうぞおっしゃらないでください。子どもと一緒にニキーチンさんになったつもりで、長くしたり積み上げたりしながら「発見」を楽しみ見守り、時にはお互いに作品を「自慢」しあってみましょう。子どもの作品をまねして同じものを作ってみるのも良いでしょう、逆になめてもらってもいいし、名前の付けあいっこも楽しい時間でしょう。

もうひとつ、ワークショップで続けていることがあります。それは「裏を見る」ということです。立方体の上面で色あわせをしますが、そっと裏返すとどんな模様になっているのか…想像通りのこともあるし、「エッ違う!」と思わず声が出ることもあったり。これは全ての積木が同じ規則で彩色されているからこそ楽しめる、ニキーチンさんの積木作りの奥深さを感じます。
じっくり自分のペースで遊ぶことで、自ら発見したことを自信にしてステップアップをしていくこどもの姿は、頼もしく輝いて見えます。そんな子どもの姿を見守りながら、タイミングよく「チャレンジできる道具」として「カード」を用意してみましょう。「出来ることからはじめる」のが大原則!絶対できる簡単なものからはじめてください。また、自らわかる工夫として積木と実寸大のカードがあると、子どもも安心して進めていくことが出来ますね。ニキーチンさんの考えられた「模様作り」は、「ちょっと積木あそびは苦手…」とおっしゃる大人の方にも遊びやすい・わかりやすいと好評です。まずは絵を描く・ぬりえをする感覚で楽しめるからだと思います。

自分の育ちの姿を見守ってもらえること、簡単なことからはじめられて自分に合わせて遊びの難易度も変化させられることは、子どもにとって「いいおもちゃ」の必須条件ともいえるでしょう。「模様つくり」も間違いなく、その条件を満たしています。

主任研究員 宍戸信子