おもちゃが子どもに語りかけること② 並べる・並べる…ひたすら並べる…
壁際・机の縁・引き戸のレールや畳の縁、ひたすら並べる子どものあの集中力と根気には、頭の下がるおもいです。手元を見ながら慎重にひたすら並べているこどもが、ふとした拍子に「今来た道」を振り返る表情は見ものです!自分のしたことをまるで初めて知ったかのように驚き喜び、そうして自分の力を感じ、心が動くことで「もっと、もっと…」と次への意欲を得る様子はこちらまでうれしくなる瞬間です。。
ビー玉・ミニカー・積木や小さな人形、いえいえそれだけではありません。箱で買い置きしている缶ジュースや筆箱の中のペンたち・財布の中に詰まっているカードや袋に入ったビスケット…長く長~く並べます。また、経験を重ねると、ものによっては丸いお皿に丸く並べたり、床の板目にあわせて並べたり、と、バリエーションもうまれます。「直線」状だけでなく、カーブしたり曲がったり、線ではなく「面」になって広がったりもします。
どうしてこんなに並べることに集中できるのか?これは並べようとするものに秘密があるように思います。カードやビー玉を思い出してください。若干の大きさの違いはあっても「同じ形がいっぱい」です。缶ジュースもそうです。ペンも長さや太さこそ違いはありますが「形状」はよく似ています。この「形状が同じ」ものがたくさんある=「この形、ぼく知ってるよ、それもこれも同じだよ」そう理解できたら、それを「使う」ことができます。
使える?なにに?
…こどもは、自分の手によってその形を使って空間を変化させて楽しんでいるのです。
空間を変化させる?
…そうです、自分の見えている空間に、物を並べることで線が生まれ面が生まれ、それによって空間が分けられたり大きさが変わったり違う空間が生まれたりするのです。
同じものがいっぱいあってそれを秩序正しく並べる行為、このあそびは空間を感じること、そしてこんなにできるんだ!という自分の力を信じることにつながっていくことでしょう。そしてこのあそびこそが、積木を構築したり絵を描いたり繰り返しのあそびを楽しんだりする力になるのではないでしょうか?
「シンプルでわかりやすい形状のものがいっぱい」を意識して用意するおもちゃは、保育室にも家庭にも是非用意してみてください。そして「並んだね」「長いね~」といいながらあっちからもこっちからも近くからも遠くからも…子どもと一緒に眺めてみてください。時には一緒に並べてみると、私たちにも新しい発見がきっとありますよ!
主任研究員 宍戸信子