クリスマス特別編 「見えてなくても “ある” んだよ」

子どもとサンタクロースの話をするとき、この力があることがいかに大事かを痛感します。子どもにはこの「サンタさんは存在する」という自分の認識に対しての、自信・信頼・ゆるぎない確信があります。どうしてでしょう。実はこの力、ほかの誰でもない、私たちおとなが支えています。一年に一回、忘れたころにやってくるクリスマス…だからいいのです!毎年、この時期が来るたびに、その時のこどもの成長・理解力に見合った方法で「サンタクロース」との出会い方・接し方を私たち大人が「教育」しています。
 赤ちゃんは、サンタさんを見ても驚くだけ、見慣れぬ人間の姿に泣き出す赤ちゃんもいます。それでも、おとなはサンタさんがいることを大前提に、クリスマスプレゼントを選び、パーティーをしたり歌を歌ったりケーキを食べたりします。赤ちゃんはぼんやりとではありますが「いつもと違う雰囲気」を味わい、大人のにこにことした雰囲気を楽しむことになります。もしかしたら赤い服や白いおひげ、ぴかぴか光るツリーなど、印象的なものは記憶に残るかもしれません。

2歳以降になると、毎年毎年の経験が成長とともに積み重なっていきます。この「一年に一回」が秘訣です。今、目の前にいる子どもに、どんな体験・経験・思いをしてほしいか、を明確に持っているおとなたちが、手間と時間をかけて思いを形にしていきます。そしてその思いの詰まった「人・もの・時間」という環境のなか、1年に一回、みな同じ時期に「クリスマス・サンタクロース」というキーワードで経験を積み重ねていく子どもたち。初めはサンタクロースに驚いた赤ちゃんも、だんだんとイメージを作り上げ、幼児・低学年の子どもたちは、見えないサンタ・会えないサンタにも思いを馳せるようになります。夏の暮らしを想像し、忙しいであろうと思いやり、思いを伝えようと手紙を書く…。子どものイメージは、自分たちの経験をもとにしつつ、それをつなぎ合わせて豊かに展開していきます。それを支えているのは、そばにいるおとな、私たちです。イメージを壊さないよう、イメージが広がり育ってくれるよう、わくわくドキドキしながら見守り、楽しんでいるから、子どもも安心して楽しめるのだと思います。

サンタさんだけではありません。家に帰った友だち・遠くに住むおばあちゃん・いったことのない国・そこに住む人々…思い・気持ち・心・考え…この「見えないものの存在を信じる力」は、子どもにだけでなく、私たちが生きていくうえでなくてはならない力だと、私は思っています。
サンタさんの本当のことを知ったとき、そのことを公言しない子どもは意外と多いといいます。自分の中で温める・人の気持ちを理解して今度は「おとな」の側に回る…これもまた、すてきだな…そう思います。今年はどんなクリスマスですか?サンタさんは今何しているのでしょう?今日あたり、私たちも空を眺めてみましょうか?