生きる力を養うピラミッドメソッド④ 「子どもの世界を広げる “プロジェクト” 」

子どもが遊びの中で自らの力を使って学びとれるように、
さまざまなテーマにそった遊びを通して子どもの心を動かします。

子どもと保育者との愛着の絆をつなぎ、子どもが主体的に関わることができる保育環境を用意する……。
こんな自然な育ちの土台ができたら、その上に種を蒔まきましょう。
 その種は〝学びにつながる遊びの種〞です。蒔くのは大人(保育者)。どんな種か?
 それは〝テーマ〞です。

遊びや生活にテーマを活かす
 ピラミッドメソッドで扱われるテーマは、誰もが感覚を通して経験・体験したことのある〝もの〞や〝事柄〞を取り上げています。水・家・色・形・数・身体・大きさ・衣服・交通・季節……と、どの子どもにとっても身近なものや事柄です。これらのテーマを一つ選んで、それを一か月ほどかけて、日々の遊びや生活などさまざまな場面でつなげて活かしていきます。
 ただし、決して一斉型の授業をしたり、教え込んだり、練習させたりはしません。幼児期は主体的に〝やってみたい〞〝知りたい〞〝面白い〞と心が動くことで、自然に遊びと学びがつながっていきます。子ども自身が「わかるって面白い」「できるって楽しい」「これってどうなってるの?」という、遊び=学びにつながる心の動きを経験させるために、テーマを使います。

テーマが遊びに活きる環境
 では、〝テーマを遊ぶ〞とは、どのようなことなのでしょうか?
まず、玄関・廊下・保育室などにテーマにちなんだディスプレイや遊べる準備をし、子どもが五感を使って興味を持ち、テーマが感じられるよう仕掛けます。子どもは保護者と共に登園するので、親子一緒にどんなテーマが始まるかを感じ、何が始まるのかな?と心を動かされます。
 保育室はたとえばテーマが「大きさ」の時には、さまざまなコーナーのおもちゃや絵本に「大小」「大きさの順番」「自分にぴっったりかどうか比べる」などの仕掛けがさりげなくしてあり、自然と保育者のテーマへの導きによって「大きさ」を遊び始めています。子どもが主体的にかかわる環境に、保育者が意識して種をまいておく。これも保育室デザインの大切な要素になっています。そしてそのテーマは約一ヶ月続き、園でも家庭でも、子どもの興味関心はより確実になっていきます。

先生が用意してくれた4種類の紙。
大きい家と小さい家ができるよ。

サークルタイムの楽しさ
 テーマは、保育者によって保育室に用意され、子どもが主体的に遊んで学ぶという方法だけではなく、保育者が子どもたちの何人かまたは全員を集めて、みんなでテーマにちなんだお話や遊びを展開していく、という方法もあります。それがサークルタイムです。
 お互いにコミュニケーションをとりながら、テーマについて気づき・わかり・楽しみを共有するきっかけを作るために、保育者も子どももみんなつながるように丸くなって(=サークル)集まる。その時間のことをサークルタイムと呼んでいます。
 サークルタイムは、時間の秩序を整えたり、自分を表現したり、相手の話を受け止めたりするためにも、大切な役割を果たしています。また、テーマを遊ぶときに「理解し」そして「使える」と今よりおもしろくなる〝言葉(概念)〞に親しめるよう、保育者が意識し、子どもにアプローチできるよさがあります。
 好奇心を引き出すだけでなく、時には子どもに質問し、時には遊びや物語を豊かに演出して、子どものできること・知っていることから、発見したこと・もっと知りたいことにつなげてやることで、テーマの概念の理解を広げ、そして深めていきます。

サークルタイム
目隠しをして、ワクワク待つ子どもたち。先生の仕掛けは何かな?
棚のおもちゃを机に置いて、“大きい順だと全部積めるはず”

プロジェクトとは何でしょう?
「テーマ」という具体的な「もの・事柄」を使って準備された保育から、子ども自身が自分にピッタリの足場を見つけ、自力で登り自信を持つ。そしてテーマをきっかけに自分の世界を広げ、深めて、世界をつなげて遊びこむことは「豊かな遊びと学びという花や実を手に入れる」ことです。ピラミッドメソッドではこの方法を「プロジェクト」と捉えています。
 保育環境の準備・遊びの内容・サークルタイムの使い方、そして一番大事な一人ひとりの子どもの育ち、これらをテーマという具体的な「もの・事柄」を使ってつないでいく……「幼児期」という特徴ある時期の子どもだからこそ必要な工夫が、ダイナミックにそして繊細に準備されているのがピラミッドメソッドのプロジェクトです。次回はこの構造をのぞいてみましょう。